#C
シャルティエル「なあ、レア」
レア「なに? 割と改まった顔して」
シャルティエル「レアゾンの事を教えてくれない?」
レア「突然すぎない?……良いと言えば良いけどさー」
シャルティエル「どうかした?」
レア「いや、ちょっと恥ずかしいっていうか……。微妙に私のことだけど私じゃない上にぜんぶ本音になるしさあ?わざわざシャルに話すってなるとさあ……」
シャルティエル「話せないの?」
レア「話しますー。ちょと頭の中で整理したかっただけですー」
シャルティエル「……」
レア「レアゾンはマクダレーナに作られたアポストル。製造目的は他人に成り済ます事。まあ、失敗作だったんだけど」
シャルティエル「失敗作?」
レア「うん。もっと簡単に他人に見た目を化けられる予定だったんだけど……強烈な感情を感知してその気になれば中身まで真似る。しかできない。想定よりは出来はいいけど使いにくいアポストルがなんかできちゃった……ってわけ」
シャルティエル「だから、ものまねが得意なのか」
レア「たぶんね。……「シャルさん!」「喜べ!女神の直系!」って具合に」
シャルティエル「……ムサシと、ミケイルか」
レア「よく似てるでしょ?観察力ばっちりよね。で、神殺しの目途が立ってテンション爆上がりしたマクダレーナを模倣した結果が今の私ってわけ」
シャルティエル「そうか」
レア「結局、レアゾンもガリアントも、ミケイルも最後の戦いに連れて行ってもらえなかったんだけどさ。……。ひどいよね。自分で作った道具なんてそんなものだった。ちょっと、くやしいし、寂しいよ」
シャルティエル「レア……」
レア「まあ、でも。シャルと出会えて、私のほしかったものを貰えて、大事にしてもらえてるから。レアゾンの願いもかなっているし、結構幸せなんだよ私」
#B
シャルティエル「レア、お前の幸せってなんだ?」
レア「どうしたの突然」
シャルティエル「ただ気になった。それだけだ」
レア「いいよ、教えてあげる。
頼られること、命令されること、……子どものころに大事にしていた人形みたいに。大切にしてほしい。……だから私、シャルに大事にされて凄く、嬉しいよ」
シャルティエル「 ……それは、アポストルの幸せじゃないのか?」
レア「私だって、それでいいよ?……それでよかったんだよぉ。
シャルがそんな顔するからだよぉ。私は道具として大事にしてもらえれば大事にしてもらえればそれで充分幸せなんだけどなあ。
シャルティエル「……」
レア「そんなふうに、困ったみたいな、怒ったみたいな悲しいみたいな顔でこっち見ないでよぉ。私が間違ってるみたいじゃんか。」
シャルティエル「……道具として大切にされることが、お前の幸せだというのか?」
レア「そんな顔してるシャルの前で頷くの、キツイんだけど?
……そうだよ。私は、そう思っている。ち私はアポストル。人間じゃなくて道具だよ。その方がしっくりくる」
シャルティエル「嘘つくな」
レア「そうだよ。それは嘘だ。
私だってわかんない。誰かに化けてる時のレアゾンなら多分わかると思う。分かったと思う。ミケイルやガリアントだって、分かると思うんだ。どっちつかずな私は、道具としては壊れているんだから。」
#A
シャルティエル「あれから、いろいろ考えてみた。レアを道具として大切にすることが俺にとって正しくない事だ」
レア「おおう……。いきなりどうした?」
シャルティエル「マクダレーナに作られたアポストルであっても、マクダレーナそっくりだったとしても。いまだに怖くても、それでも……それよりも」
レア「まってまってまって」
シャルティエル「俺は、お前のことが好きだ。道具への、愛着じゃない」
レア「シャルはさあ。想いを伝えるの、1か0しかない人? そこまで直接的に言われると本当に恥ずかしいんだけど」
レア「私でいいの? 先はないよ?」
シャルティエル「構わないし、ずっとそうとも限らない」
レア「もう。私も、シャルの事、好きだよ。そばにいてくれたら幸せかもしれない。でも……どうなっても知らないよ?」
シャルティエル「嬉しいな」
レア「~~~~~。凄いね、シャルは」
シャルティエル「レア、お前の幸せって、なんだ?」
レア「……レアゾンの幸せはね。世界を味わう事だった。
二文字消えた私の幸せは。シャル、あなたの想いに応えられたことだよ」