名無しお母さん

残滓編 第1話

2021/01/24 (Sun) 05:06:09
■プロローグ

 竜と女神に創られし大陸ヴィルサイティス。
 大陸歴905年の事、混沌と怨嗟の魔女マクダレーナの暗躍によりこの大陸全土に戦の花が咲き乱れた。
 しかし各国の英雄らの共闘により花は散り、マクダレーナは混沌と世界から解放され、その顔に喜びを湛え、ヴィルサイティスを旅立った。
 そしてその5年後――。
 大陸歴910年、今も大陸は時を刻み続ける。
 父なる竜の背を血で汚し、母なる女神の御心に深い爪痕を残し、一人の乙女の魂と引き換えにして。

■セイシェル皇国 背景<ゲルブライト邸宅 バルコニー>

 月が冷ややかに煌めく晩、一人の貴人が杯を片手にバルコニーに佇んでいた。
 短く切り揃えられた銀糸の髪を淡い夜風が撫ぜ、通り過ぎて行く。
 貴人の名はエイル・クレメンティナ・ゲルブライト。905年の大戦を戦い抜いた英雄「だった」青年の一人である。
 エイルは杯に注がれた琥珀色の酒を勢い良く飲み干し天を仰ぐと、微笑みを浮かべ古い愛の詩を囁いた。

「その辺にしておけ」

 誰かがエイルの背後から杯を取り上げる。
 振り返りざまにバランスを崩しよろけたエイルを、長身の貴族の男が抱き留めた。
 
エイル「やあ……、お帰りなさい」

 褐色の肌、鋭い切れ長の双眸――男の名はレイス。エイルとは幼馴染の間柄であり、彼もまた905年の大戦を戦い抜いた一人である。
 セイシェル皇国の格式高い貴族の装いに身を包み、エイルを支える右腕であり”盾”となった彼からはかつての荒くれた印象は見受けられない。

レイス「飲みすぎだ」

 レイスは小さく息を漏らし、エイルを壁にもたれかけさせた。

エイル「どうだった? ”議会”は」

 エイルは俯き、小さく笑いながら尋ねた。

レイス「……相も変わらずだ。
大陸復興へ向けての議論もそこそこに、本題はアレについてだ」

 眉間に皺を寄せてレイスは空に向けて顎をしゃくる。
 夜空には、月とはまた別の黒い何かが夜風と戯れるようにふわふわと漂っている。
 その形はまるで巨大な魚影のようであり、まるで太陽のようだった。

レイス「混沌と災厄の象徴であり元凶でもあるアレを――”黒い太陽”を粛正するか否か。
粛正を勧めるベルターナの女帝アスレアと断固反対するベルニア新王ティーンの舌戦の末、いつもの時間切れだ。
双方は一歩も譲らず。他国の王族貴族は腹の内じゃどう思っているかは別にして、どちらにも加担してねえ」

エイル「そう」

レイス「だが日に日にベルニアの方が分が悪くなってきている。ベルニア王の言い分は余りに現実的じゃねえ。
……正直、俺だって未だに」

エイル「レイス」

 エイルが顔を上げ、微笑みながら小さく首を横に振った。オーロラ色の瞳の奥は冷たく、笑っていなかった。

レイス「……悪かった」

 エイルは微笑んだまま再び視線を床に落とす。

レイス「陰でベルターナの技術者連中がきな臭い動きをしているという情報が入ってきている。恐らく近々強行に出るつもりだろう。
こちらとしてはベルターナが今以上の軍事力を持つことを何としてでも食い止めて」

エイル「私には政治の事はよく分からないよ」

 エイルは困り笑いを浮かべてレイスの言葉を遮る。
 レイスは言いかけた言葉を飲み込み、エイルを見返した。

レイス「お前は……本当に、それでいいんだな?」

 レイスの問いかけにエイルは何も答えず、黒鉄の義手を本物の手指のようにひらつかせ、バルコニーを後にした。
 
エイル「おやすみなさい」

■セイシェル皇国 背景<ゲルブライト家 廊下> 

エイル「お……っと」

 エイルが覚束ない足取りで鼻歌混じりに歩いていると誰かとぶつかった。
 
エイル「……あぁ、すまなかったね。大丈夫かい?」

???「……」 

 相手――少女は口を真一文字に閉じで答えない。

エイル「そろそろ子供は眠る時間だ。早く部屋に戻りなさい」

 エイルは少女の頭に手を置く。少女はその手を振り払いエイルを鋭く睨みつけた。

エイル「お……っと。ははは、おやすみなさい。良い夢を」

 エイルは微笑み、立ち去った。
 残された少女は唇を噛み、ふらふらとその場を後にするエイルの姿が見えなくなるまで睨み続けた。 

 ――そしてその日、銀星の貴公子エイルはセイシェルから姿を消した。
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Re:残滓編 第1話

2021/01/24 (Sun) 05:08:10
■セイシェル皇国 背景<ゲルブライト家 門前>

侍女「ジュリア様、どちらへ行かれるのです?」
 
 陽の光の下、淡く輝く長い金の髪を靡かせ颯爽と歩く少女を侍女は慌てた様子で引き留める。
 ジュリアと呼ばれた少女は静かに振り返った。
 まだ幼いながらもその顔立ちは気高く、腰に剣を差し背筋を伸ばした様は凛々しく、先導者さながらの風格さえ纏っていた。
 一方、彼女のハシバミ色の瞳と紅薔薇の蕾のような豊かな唇は愛らしさと温かみを帯び、人好きのする明るい魅力を醸し出していた。

ジュリア「……散歩へ」

 短く言い、連れていた相棒の黒馬――シュトーレンに跨る。

侍女「ですが今日は、ダリア様と舞踊の稽古のお約束が」

ジュリア「約束した刻限までには戻ります。……行くぞ、シュトーレン!」

 ジュリアは侍女の静止を振り切り、愛馬シュトーレンの腹を軽く蹴って共に駆けだした。

■セイシェル皇国 背景<湖畔>

 愛馬を駆り、街道と深い森を抜けたその先には小さな湖が拡がっていた。
 水鏡のように空の色を写し取る程澄んだ水辺の畔には、名も無き色とりどりの草花が慎ましくも美しく咲き乱れている。
 ここはジュリアのお気に入りの場所だった。
  
ジュリア「……んーっ!」

 ジュリアは愛馬から降り、大きく伸びをする。そしてその場に大の字になって寝転ぶと胸いっぱいに空気を吸い込んだ。
 瞼を閉じ、鼻腔に拡がる土と柔らかな草花の香りを心の奥深くで味わう。

 ――久し振りに、息をしたような気がする。

 エイルが消息を絶って十日が過ぎていた。
 事は公にはされず邸宅内でも一部の者にしか知られていなかったが、ここ数日間の邸宅内全体の空気は息が詰まる程張り詰めていた。
 特に息子の突然の失踪にエイルの母、クリスティナの塞ぎ様は見ていられなかった。
 
 ――クリスティナ様だけじゃない。セドリック様もダリアおねえさまも、お疲れになっている……。

 ジュリアは先の大戦の最中に勃発したセイシェル皇国での反乱に与したファレンシス家の女当主、マリーアン卿の忘れ形見だ。
 謀反人の娘であり、独りぼっちになってしまったジュリアを本当の家族も同然に受け入れてくれたゲルブライト家の人たちの悲しむ姿を思い出し、ジュリアは胸の奥が締め付けられる感覚を覚えた。
 ……同時に灼けつくような苛立ちが、沸々と湧き上がってくる。

 ――家族を、あんなに優しくて素晴らしい人たちを悲しませるなんて!

 ジュリアは閉じた瞼をさらに強く閉じると、エイルの姿が脳裏によぎる。
 過去の大戦から帰還した際のエイルの余りに痛々しく惨たらしい姿に、誰もが言葉を失った。
 しかしベルニア新王を筆頭にトルケ王国の王女、レイスらの尽力の甲斐あってか、驚異的な早さでその身を回復させていった。
 以前の身体に戻って間もなく自由都市で行われている”議会”に出席し、積極的に公務に励み、公人としての責務を果たそうとしていた。
 その様子に誰もが安堵し、拙いながらも元の日々に戻っていく……少なくともジュリアはそう思っていた。

 ――だけど、あの人は変わってしまった。

 いつの日からかエイルは”議会”への出席をぱったりと止めてしまった。
 最近では公務さえもレイスやダリアに任せる事が増え、虚ろな瞳で昼夜問わず空を見上げては、酒を煽るようになっていた。
 その余りにも極端な変化ぶりに、彼の家族や彼を慕う人々、そしてジュリアも困惑を隠せないでいた。

ジュリア「一体、何があったっていうんだ……」

 きつく閉じていた瞼をやわらげ、うっすらと瞳を開ける。
 抜けるような群青の空に漂う巨大な影がジュリアを見下ろしていた。
 終戦後に突如として現れたそれこそが、エイルが天を仰ぎ飽きもせずに見つめているもの。
 空に浮かぶそれが一体何なのか、ジュリアは知らない。
 エイルの師であるエナシュ将軍は”エイルは忘れ物を取りに行きたいのだよ”と要領を得ない事を言っていたが……。

 ――その『忘れ物』は、家族や今あるものを蔑ろにする程のものなのか?
 
 悠然と空を漂うそれを見ていると、再びエイルの姿が脳裏によぎった。今度は虚ろに微笑み、空を仰ぎ酒を煽る姿だ。
 ジュリアの眉間に皺が寄る。再び灼けつくような苛立ちが込み上がってきた。

ジュリア「……ああ、もう! 折角息抜きに来たのにっ」

 ジュリアは上体を起こし、手元に伸びていた草を千切って投げた。
 千切られた草は、宙に舞い風に運ばれて何処かに飛んでいった。
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Re: 残滓編 第1話

2021/01/24 (Sun) 05:12:04
■セイシェル皇国 背景<街道>

 結局ジュリアは休息もそこそこに、予定よりも早くゲルブライト邸宅に戻ることにした。
 ゲルブライト家の人々の事。
 突然人が変わったように堕落した挙句、失踪したエイルの事。
 エイルを腫物のように気遣いをする周囲の事。
 過去の大戦の最中に起こった出来事。
 空に浮かぶ巨大な影の事。
 これらへの疑問と苛立ちが堂々巡りして、気が休まらなかったのだ。

ジュリア「……うん?」

 ジュリアが悶々としていると、向こう側から力なく歩いてくる人影が目に入った。
 顔を俯かせ気味に歩いていた相手もジュリアに気付き、道の端に寄り短く逆立った赤毛の頭を下げ、ジュリアが通り過ぎるのを待つ。
 セイシェルの技師や職人の男達が身に着ける装束の無造作に捲り上げられた袖から伸びた腕や首筋、肩も、騎士団の男たちに引けを取らぬ程逞しかった。
 ジュリアとシュトーレンが男の横を通過すると男は再び歩き出した。ジュリアが男を横目で追うとやはり力なさげに、とぼとぼと歩いていった。

ジュリア「――君! 待ってくれ!」

 男は不意に呼び止められた事で弾かれたように背筋を伸ばし振り返った。
 立派な体躯とは裏腹に、男の顔立ちは素朴で優し気であった。少年と青年の狭間で揺れる容貌から察するに、年の頃は恐らくジュリアとそう変わらない。
 ジュリアは愛馬のを転回させ彼に近づいた。

???「ぼ、僕に何か御用ですか?」

 少年の濃藍の瞳には困惑の色が浮かんでいる。

ジュリア「すまない、突然声をかけたりして」

 言ってジュリアはシュトーレンの背から降りた。意外にも背丈はジュリアとそう変わらなかった。

ジュリア「なに、君が酷く思い詰めているように見えたから気になってしまってね。
……私の思い違いならそれで良いんだが、何か困った事でもあったのかい?」

 赤毛の少年はジュリアの問いに暫し言い淀んで口を開いた。

???「……村を、僕の住んでいる村を助けて貰えないかと思ってゲルブライト公爵様の邸宅を訪ねたのですが、誰にもお会い出来なくて」

ジュリア「門前払いを食らったのだろう?」

???「どうして分かるんですか?」

ジュリア「! いや。君の表情を見てそう思っただけだよ」

 ジュリアは慌てて首を横に振って答えた。

 ――迂闊なことを言って民を不安がらせてはいけない。

???「……一応、門兵の人には村長様から預かった手紙は何とか渡す事は出来たけど…… けど…… ……」

 少年は俯き唇を噛むと小さく肩を震わせた。
 
ジュリア「大の男がなんて顔をしているんだ。
門前払いとは言え嘆願書は渡せたのだろう? きっと公爵様方のお目に留まるさ」

 ジュリアは少年の背中を叩き力強く言った。

ジュリア「とりあえず君を家まで送ろう。家族や村の人達が君が戻って来るのを待っている筈だ。
君、名は何という? どこの村から来たんだい?」

ケヴィン「……ケヴィン。トリゴ村のケヴィンです」

 少年、ケヴィンの絞り出すような答えにジュリアは思わず目を見開いた。
 トリゴという村は、今はゲルブライト家の統治下にあるがかつてはファレンシス領内にあった村の一つだった。

■セイシェル皇国  ファレンシス領内 背景<村>

 目の前に拡がる惨状にジュリアは呆然となり言葉を失った。
 踏み荒らされた田畑、火に焼かれ崩れ落ちた家屋、逃げ惑う人々とそれを追い回すならず者共――まさに今、略奪が行われている瞬間だった。

ケヴィン「! 母さんっ!」

 ジュリアがはっと我に返るより僅かに早く、ケヴィンがシュトーレンの背から飛び降り駆けだした。

ジュリア「ケヴィン!? ……あれは!」

 向こうから中年の女性が走ってくるのが見えた。それを粗末な身なりの男が斧を掲げて追い回している。
 女性の足が縺れて躓き、転んだ。とうとう男が追いついた。その場に蹲り身を縮こまらせた彼女めがけて斧が振り下ろされる。

ケヴィン「!!!!」

 ケヴィンが咆哮を上げ勢い良く男に体当たりを食らわせると、男はケヴィン共々吹き飛び地面を転がった。
 跳ねるようにケヴィンはすぐさま起き上がり、蹲る女の身を案じるように駆け寄る。
 二人の様子から女がケヴィンの母親なのだとジュリアは察した。
 男がよろよろと立ち上がった。片手の斧は手放していなかった。
 ケヴィンもそれに気付き母を庇うように母に覆いかぶさり身をすくませる。

ジュリア「! いけないっ!」
 
 ジュリアは腰に差した剣を鞘から抜く。剣先を天に掲げると刀身から稲妻が迸った!

■セイシェル皇国領内 戦闘<村>

 =戦闘アニメーション ジュリア VS 山賊=
 
 山賊Lv.1
 HP26 力8 速さ7 技4 守備4 幸運0 魔防0 体格12 移動5
 所持品:鉄の斧

 ・ジュリアの攻撃 ジュリアのケラウノスの魔法攻撃によるクリティカルで山賊撃破
 ※命中率・回避率・必殺率など無関係にこの戦闘では必ずジュリアがクリティカルで敵を撃破する
 ※経験値は入らないがケラウノスの使用回数も減らない

 男はジュリアの剣から放たれた稲妻に打たれ、再び倒れた。

ジュリア「お怪我は?」

 呆然とするケヴィンとその母にジュリアが駆け寄り尋ねると、母親は言葉なく首を横に振った。

ジュリア「では見つかり難い場所に身を隠すのです」

 ジュリアは短く言い、未だ踏み躙られ続ける村を見やった。
 身体は自然と動いた。ジュリアは剣を抜いたまま愛馬と共に蛮行の渦中へと飛び込む。

ジュリア「命が惜しくば立ち去れ!」
 
 そして力の限り叫んだ。その瞬間、あらゆる眼差しがジュリアに向けられる。
 ジュリアはぶるりと身震いした。しかしすぐさま己を奮い立たせるように瞳を見開き、剣を握る手に再び力を込め直した。
 
ジュリア「退かぬなら! 私が相手になろう!!」

■戦闘開始!

勝利条件:敵全滅
敗北条件:ジュリアの敗北

敵:盗賊×2 山賊×3 戦士×2 傭兵×2
ドロップアイテム:傷薬×2

NPC:村人×5
・村人は「救出」すると経験値が100入る。
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Re: 残滓編 第1話

2021/01/24 (Sun) 05:16:22
■戦闘開始直後の会話 戦闘マップ<村>

・ジュリアの隣にケヴィンが並ぶ

ケヴィン「ま、待ってください!」

ジュリア「! ケヴィン?! ここにいては危ない。君も母君と一緒に隠れているんだ」

ケヴィン「いいえ。ぼ、僕も一緒に戦います。逃げ遅れた人たちを一人でも多く助けたいです!」

 斧を構えて見せたケヴィンの手は、かすかに震えていた。しかしその眼差しはジュリアと同じく覚悟を決めた眼だった。

ジュリア「……それは私も同じ気持ちだ。
しかしバラバラに動くのは危険だ。出来るだけ私の傍を離れず、私の指示に従い行動すると約束出来るか?」

ケヴィン「は、はい! 約束します!」

ジュリア「よし。では私が敵を引きつけよう。君はその隙を見計らって逃げ遅れた人たちの事を頼む」

ケヴィン「はい! ……あ! あの!」

ジュリア「何だ?」

ケヴィン「お、お名前を教えてくれませんか?」

 ジュリアは未だ自分の名をケヴィンに告げていなかった事に気付いた。

ジュリア「ジュリアだ。こっちはシュトーレン。
では改めて……共に行こう! ケヴィン!」

ケヴィン「はいっ、ジュリアさま!」

■戦闘中の会話 戦闘マップ<村>

・敵フェイズ2ターン目開始時に敵増援 ソルジャー×2 賢者×1

・ソルジャーは村人NPCに向かって移動及び攻撃を開始する
・賢者はユニットが移動できない場所に待機してその場を動かない。

ジュリア「! あの軍服は……!」

・ジュリア、敵ソルジャーに隣接

ジュリア「これは一体どういう事です? 領民を守る立場の方々が一体何をしておられるのですか?!」

 兵士が纏う軍服は、ゲルブライト公爵家直属の騎士や文官のみが身に着ける事を許されたものだった。
 現在ファレンシス領の村々には、ゲルブライト公爵家に直接仕える文官や兵士が派遣され統治がなされている。だがその兵士達が事もあろうにファレンシス領民に刃を向けている。
 その現実を目の当たりにしたジュリアの胸の鼓動が速くなる。眉間の奥が疼き、唇が震えた。

兵士「……」

 ジュリアの問いに兵士は答えなかった。しかし返事の代わりと言わんばかりに兵士の持つ槍の穂先がジュリアめがけて突き出された。

ジュリア「なっ!?」

 =戦闘アニメーション ジュリア VS ソルジャー=
 
 ソルジャーLv.1
 HP30 力6 速さ7 技6 守備7 幸運0 魔防1 体格10 移動5
 所持品:鉄の槍

 ・ソルジャーの攻撃がジュリアに命中
 ※パラメータなど無関係にこの戦闘では必ずジュリアが一定のダメージを受ける
 ※ジュリアの装備とは無関係にジュリアは反撃をしない

ジュリア「く……」

 既のところで相手の一閃をかわし致命傷は免れたものの、一瞬の隙を突かれジュリアは傷を負った。
 痛みと身体から血が流れる感触が合わさる。ジュリアは眉間に皺を寄せた。

ケヴィン「ジュリアさま!」

・ケヴィン、ジュリアに隣接

ケヴィン「ジュリアさま、大丈夫ですか!?」

 ケヴィンの青ざめた顔を見てジュリアは歯を食いしばり、かぶりを振った。

ジュリア「こんな怪我、大したことはない」

ケヴィン「だけど……」

ジュリア「いいから! 私に構わず行くんだ!」

ケヴィン「は、はい!」

・ケヴィン、ジュリアから3マス離れる

 ジュリアは自信ありげにケヴィンに言ってみせたが、内心動揺していた。
 まさかゲルブライト公爵家直属の正規兵が野盗と共にジュリアたちを攻撃してくるとは思わなかったのだ。

 ――だが、ここで退くわけにはいかない。

ジュリア「さあ、行くぞ!」

 ジュリアは剣を構え直した。すると……。

兵士「???縺茨ス医?縺?ス??縺?ス抵ス茨ス呻シ??撰ス抵ス具ス費」

ジュリア「!? な、なんだ。何を言っているっ」

 兵士は聞いた事のない、恐らくどこの国の言葉でもない言葉を発した。
 兵士は再びジュリアに鋭く槍を向けた。弾かれるようにジュリアはシュトーレンを駆り、咄嗟に兵士との間合いを取った。

・ジュリア、敵ソルジャーから1マス離れる

兵士「縺ヲ繧㎝繝ウtwpc縺ョ邨オ縺「縺?ス難ス」

 兵士が再び何かの言葉を発する。発せられた言葉や表情からは何の感情も抑揚も感じられない。
 その異様さ、不気味さにジュリアは全身を粟立出せた。

???「良かったら助太刀しましょうか?」

ジュリア「!?」

 ジュリアの頭上に大きな影と、鳥の羽にしては大きな白い羽が一片落ちてきた。
 ジュリアは声のした方――空を見上げた。
 逆光で良く見えなかったが、大きな翼と人の姿が重なって見えた。

ジュリア「……天使……」

???「まさか」

・ファルコンナイトがジュリアに隣接

 声の主が天馬を駆り、ジュリアの目線近くまで降りてきた。
 紺碧の髪を簡素に纏め上げた、快活そうな面差しの成熟した女性騎士だった。

ジュリア「貴方は何者です?」

アビゲイル「あたしはアビゲイル。トーヴェ国の天を駆ける傭兵の存在はご存じで?」

ジュリア「傭兵……」

 アビゲイルはにこやかに「はい」と頷く。

アビゲイル「あたしを雇ってくださればこの戦い、必ず勝ちに導いて差し上げます」

 アビゲイルは軽快に言ってのけた。
 余裕と自信に満ち溢れた瞳の輝きと、手入れが行き届き使い込まれた武具を見てジュリアは頷いた。
 
ジュリア「分かりました、貴方を雇います。是非お力添えください。
……では、どうぞこれを」

 ジュリアは自身の上着に刺していた黄金のブローチを外し、アビゲイルに差し出した。
 宝石が散りばめられ、凝った細工のそれは見るからに高価でこの世に二つとない物だと見て取れた。

アビゲイル「えーっと、これは?」

ジュリア「本来は金銭を払うべきなのでしょうが、生憎今は持ち合わせがありません。なので代わりにこれを差し上げます。
換金すれば5000ゴールドくらいにはなるでしょう。ですから」

 アビゲイルは首を横に振りブローチをジュリアに突き返した。

ジュリア「これでは足りませんか?」

アビゲイル「いえいえ。そういうのは大事に持っておいた方がいいと思いまして。
お金はあたしの戦いぶりを見てから払ってもらえれば良いですよ。何なら出世払いでも構いません」

ジュリア「そういうもの、ですか?」

アビゲイル「まぁ、その時その時で違うんですけどね。
さあ、そんな事は置いといて。ぱぱっと片付けちゃいましょう、ジュリア様!」

■戦闘中の会話 戦闘マップ<村>

 ・ジュリア・アビゲイル隣接時

アビゲイル「ジュリア様、一度後方に下がってお怪我の処置をなさってください」

ジュリア「いえ。この程度、大したことありません」

アビゲイル「駄目です。その傷を放っておけば今後の行動に差し障ります。退ける時に退くのも大切な事ですよ。
それに姫君の玉のお肌に傷跡でも残ったらどうするんですか」

ジュリア「……分かりました。貴方の言う通りにしましょう」

アビゲイル「これをお使いください。あるスジから仕入れた特製の調合薬です。良く効きますよ」

ジュリア「ありがとう、遠慮なく使わせてもらいます。……それはそうと、私はまだ貴方に名を名乗っていなかった筈ですが……」

アビゲイル「やだなー、気のせいですよ。
まぁそんな事より、しっかり傷の手当てして下さいね。では、また後で!」

 『調合薬』を手に入れた!

■戦闘中の会話 戦闘マップ<村>

 ・ケヴィン・アビゲイル隣接時

アビゲイル「キミがケヴィン?」

ケヴィン「! はい。えっと……」

アビゲイル「あたしはアビゲイル。今さっきジュリア様に雇われた傭兵。……ふーん……」

ケヴィン「あ、あの……何ですか?」

アビゲイル「キミ、力もありそうだけど、手先も器用そうだよねえ。
……これあげる。使える武器は多い方が何かと便利だし、状況に応じて使い分けてよ」

ケヴィン「あ、ありがとうございます! やってみます」

アビゲイル「ま、無理しない程度に頑張って。じゃあね!」

 『鉄の槍』を手に入れた!
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Re: 残滓編 第1話

2021/01/24 (Sun) 05:20:15
■エピローグ

■セイシェル皇国 ファレンシス領内 背景<村>
 
ジュリア「はぁ……はぁ……」

 ケヴィンとアビゲイルの援護もあってジュリアはどうにか野盗を撃退できた。
 
 ――残るはあと一人。

 ジュリアはゲルブライト家の正規兵を引き連れ、一人高みの見物をしている高位の魔道士を睨みつけた。
 しかしその者はジュリアと対決する事なく、その場を後にした。

ジュリア「! 待てっ!」

アビゲイル「ジュリア様、深追いはよした方が良いですよ」

ジュリア「しかし……」

アビゲイル「残念ながらあっちの方がジュリア様より格上です。追いついた所で返り討ちに遭うのが目に見えてますよ」

 痛いところを突かれてジュリアは言葉を詰まらせる。

アビゲイル「どうしても気になるって言うんなら、あたしにお任せください。
戦闘もさることながら、追跡や偵察は得意中の得意ですから」

 アビゲイルは胸を張ってジュリアに言ってみせる。

ジュリア「……では、お願いします。何から何まで、ありがとうございます」

アビゲイル「いえいえ。これが仕事ですから。
それじゃ、行ってきます」

・アビゲイル、マップを離脱する

 ジュリアは剣を鞘に収め、昂った気持ちを抑えるべく深呼吸をした。
 息を吸った唇は震え、鼓動は耳の奥に響くほど激しく高鳴っている。

 ――戦いは、終わったんだ。

ケヴィン「ジュリアさま!」

ジュリア「! ケヴィン」

 ケヴィンが母と共にジュリアに駆け寄って来た。
 その表情は最初に出会った時よりも晴れやかに見えた。

ジュリア「みんな……無事だったんだね」

 周囲を見回すと、村の人々が家屋や田畑の鎮火作業や怪我人の手当などにあたっている。

ジュリア「良かった、本当に」

ケヴィン「ジュリアさまのお陰です。母さんも助けてくれて、本当にありがとうございます」

 ケヴィンが大袈裟に頭を下げた。その後ろで彼の母親も瞳を潤ませて何度もジュリアに頭を下げた。

ジュリア「いや、きっと私独りでは足がすくんで何も出来なかった。君の咄嗟の勇気があったから私は動けたんだ。
私の方こそ、ありがとう」

 ジュリアが微笑み言うと、ケヴィンは照れ臭そうに、そして誇らしげに笑ってみせた。

ケヴィン「そ、そうだ! 村長様がジュリアさまに直接会ってお礼を言いたいって」

ジュリア「ああ……礼はともかく、私からもお聞きしたい事があるんだ」

 ジュリアがシュトーレンの背から降りた。その途端、ジュリアはその場にへたり込んでしまった。

ケヴィン「ジュリアさま!?」

ジュリア「ほっとして、力が抜けてしまったみたいだ。……すまないが手を貸してくれるか?」

■セイシェル皇国 ファレンシス領内 背景<民家>

ケヴィン「さあ、こっちです!
お……村長様! 連れてきました!」

レシエ「ああ、ケヴィン、ありがとうね」

 ケヴィンと彼の母親に案内された家屋の一室に、杖を携えた老齢の女が椅子に腰かけていた。その傍らには使用人らしき者を従えている。
 彼女がトリゴの村の長なのだとジュリアは察し、一礼した。

レシエ「わたくしは村の長を務めます、レシエと申します。この度は村の窮地をお救いいただき、本当に、本当にありがとうございます」

 村長はそう言うと椅子から腰を上げた。しかし上手く身体に力が入らないのか、バランスを崩し床に膝を着く。
 ケヴィンと使用人が慌てて彼女を助け起こし、改めて椅子に座らせた。
 床を転がった杖をジュリアが拾い上げると、ジュリアは大戦から戻って暫く経った頃のエイルを思い出した。

 ――この人は、身体の自由が効かないんだ。

レシエ「申し訳ありません、本当はこちらから出向きお礼を申さねばならないのに……」

ジュリア「構いません。お怪我はありませんか?」

 ジュリアは膝まづき、杖を改めてレシエの手に握らせる。そして彼女の手を慈しむように包み込んだ。

レシエ「……貴方様はもしや、マリーアン様の……?」

ジュリア「!」

 ジュリアは思わず顔を上げた。

レシエ「ああ、ああ……やはり、ジュリア様なのですね!」

ケヴィン「村長様、ジュリアさまを知ってるんですか?」

レシエ「知っているも何も……ファレンシス領主様の、マリーアン様のお嬢様ですよ」

ケヴィン「え?!」

 ケヴィンが驚きの声を上げた。

ジュリア「母と面識がおありだったのですか?」

レシエ「マリーアン様はジュリア様をお連れになって何度もトリゴの村を慰問に訪れてくださいました。その際にわたくしやエミーナ――ケヴィンの母のような障碍を抱える者にも文字や学問、様々な技術を授け、生きる術をお与えくださいました。
その時の御恩、生涯忘れますまい」

ジュリア「慰問……」

 ジュリアは記憶を遡る。

ジュリア「確かに、この村に限らず何度か領内の町村を母と訪れた記憶があります。尤も私は旅行気分で遊び回っていただけだった気もしますが……。
それはともかく、私の事などとうに忘れられていると思っていました」

レシエ「忘れる筈がありません。幼い頃のジュリア様も、今のようにわたくしの手を優しく握ってくださいました。
あのお可愛らしかった姫様が、こんなにご立派になられて……将来が、この地に再びお帰りくださるる日が楽しみでなりません」

ジュリア「私は咎人の娘です。貴方がたにそのように思って頂く資格はありません……」

レシエ「何を仰います。ジュリア様は今こうして我々の窮地をお救いくださったではありませんか。
マリーアン様も、あのような事になってしまいましたが、常に領民が少しでも豊かな暮らしが出来るように、常に我々に寄り添いを思い遣ってくださる御方でした。
貴方も、貴方のお母様も我々のために文字通り命を賭して戦ってくださいました。その事には変わりありません」

ジュリア「どういう事です? だって、母は……」

レシエ「詳細は知らされてはおりませんが、マリーアン様は五年前の謀反が勃発するその直前までファレンシス領民に不利益が生じぬように陰ながら奔走しておられたそうです。
その結果、ファレンシス領の民は五年前とほぼ変わらぬ生活を送ることが出来ているのですよ」

ジュリア「そう、だったのですか」

 ジュリアは何も知らず、母の事を不甲斐なく思っていた自分を恥じた。
 同時に今の自身の待遇への疑問も腑に落ちた。
 五年前の謀反に加担した貴族家の者たちの殆どが悲惨な末路を辿ったと聞かされていた。にもかかわらず何故謀反の発起人の一人だった娘の自分が、何の罰も受けずにゲルブライト公爵家で丁重にもてなされ家族も同然に扱って貰えていたのか。

 ――全ては、母様のお陰だったのか。ありがとう、母様……。

レシエ「事実、ゲルブライト公爵家から派遣されたお役人様方は我々にとても良くしてくださっていました。
しかし数日前から急に人が変わったようになり、どこから連れて来るのか、ならず者や野盗共を村に招き入れこの有様となったのです……」

ジュリア「それで嘆願書をしたため公爵家の方に直々にお渡ししようとしたのですね」

 レシエは頷いた。

ジュリア「分かりました。私からも事の顛末をセドリック卿にお伝えしてみましょう。ご多忙な卿に、私の声がどこまで聞き入れられるか分かりませんが……」

レシエ「どうか、どうかよろしくお願いします。」

 レシエはジュリアに深々と頭を下げた。

レシエ「……それにしても我々も運のない。実はお役人様方の様子がおかしくなる数日前に久し振りにエイル様がここへお越しになったのです。
おかしな話ですが、公子がいらした時にこのような事態になっていればより早く事態は収まっていたかも知れませんのに……」

ジュリア「! エイル公子がここを訪ねたのですか!?」

 ジュリアがレシエに詰め寄る。

レシエ「ええ、何か調べ物のためにファレンシス領主様の邸宅に御用があると仰っておりましたが……ジュリア様?」

 ジュリアは咳払いをして引きつった表情を取り繕う。

ジュリア「失礼。レシエ殿、前言撤回します。
今日お聞きした事は必ずセドリック卿にお伝えします。暫くは不安な日々が続くでしょうが、新たな役人殿が派遣されるまではどうか耐えてください」

 ジュリアは礼儀正しくレシエに一礼をし、部屋を後にしようとした。

レシエ「ジュリア様」

 ジュリアが振り返る。

レシエ「我々ファレンシス領の民は皆、ジュリア様が成人し領主様として戻って来てくださることを待ち望んでいます」

 レシエの言葉に彼女の使用人も、ケヴィンも、エミーナも頷いた。
 彼らの眼差しにジュリアの目頭が、仄かに熱くなった。
Pass :
名無しお母さん

Re: 残滓編 第1話

2021/01/24 (Sun) 05:42:45
■エピローグ2

■セイシェル皇国 ファレンシス領内 背景<村>

アビゲイル「ジュリア様、ただいま戻りました」

 アビゲイルの操る天馬が滑空しジュリアの前に降り立った。

ジュリア「ありがとうございます、アビゲイル殿。首尾は如何ほどでしたか?」

アビゲイル「堅苦しいですねー、ジュリア様はあたしの雇い主なんですからもっと砕けた物言いで良いんですよ?
……ま、それはそうと。件の魔道士の追跡は無事成功しました。身なりからしてもこの村に派遣されていた役人の頭がアイツで間違いないでしょう。
でも入っていった場所がねえ……」

ジュリア「どこに行ったのです?」

アビゲイル「ファレンシス家邸宅。つまり、ジュリア様のご実家です」

ジュリア「!? 馬鹿な! 我が家の門戸は厳重に封鎖され、鍵だってゲルブライト家の方だけしか触れられない筈なのに……」

 ジュリアはレシエの言葉を思い出した。

ジュリア「……エイル公子が、数日前に……調べ物のために訪れたって……」

 確証は全くない。しかしエイルと役人の動向がジュリアの胸の内で繋がったような気がした。

ジュリア「……アビゲイル。もう一つ頼まれ事を聞いてくれますか?」

アビゲイル「あたしに出来る事ならなんなりと」

ジュリア「ゲルブライト公爵家のセドリック卿とダリア公女に書簡を届けて欲しいのです。早急に。緊急の内容だと付け加えて」

アビゲイル「それはお安い御用ですが、紙とペンはお持ちで?」

ジュリア「……。レシエ殿にお借りしてきましょう。暫しお待ちください」

 急ぎ足でレシエの元へ戻るジュリアにアビゲイルは「はい」と笑って返した。

■セイシェル皇国 背景<ゲルブライト邸宅内>

「ジュリア! ジュリア!!」

 流行の華やかな貴族の装束を纏った男装の麗人が、その衣装に似つかわしくない程に銀の髪を振り乱して邸宅内を駆けまわっていた。
 長い銀糸の髪をリボンで束ね焦燥の表情を滲ませる麗人の名はダリア・セオドア・ゲルブライト。公子エイルの妹姫であった。
 その容姿は若かりし頃のエイルと瓜二つと言っても過言ではない。

ダリア「見つかったかい?」

 同じく邸宅内を慌ただしく動き回るジュリアの侍女や手の空いた兵士を掴まえてダリアは尋ねる。双方とも首を横に振った。

侍女「お屋敷内もお庭も、くまなく探したのですが、どこにも……」

兵士「姫様がよく通っていらした湖畔や村の週辺も見て参りましたが見つかりませんでした」

 ダリアはそうか、と呟きうなだれた。

ダリア「ああ……どこに行ってしまったんだ! ジュリア!」

「随分と賑やかだな」

 声の方をジュリアは見た。褐色の肌の貴人が半ばからかうように言いダリアのもとにやってきた。

ダリア「これはレイス、公子。……ごきげんよう」

 ダリアは言葉に詰まりながらも一礼をする。レイスは止せ、と首を横に振る。

レイス「らしくない事はするな」

 ダリアはふん、と鼻を鳴らした。

ダリア「快く思っていない相手にも一応、礼は尽くさねばなるまい。
……それより、君はジュリアを見かけなかったか? 朝散歩に行くと侍女に告げて出掛けたきり戻らないんだ」

レイス「アイツも羽目を外したい年頃だ。サボりだろうさ」

ダリア「君と一緒にしないでくれ。今まで稽古や座学の時間に遅れた事がない子だ。だから何かあったのではないかと心配で……。
どうせ暇なんだろう? 一緒に探してくれ」

レイス「あのな。暇だったらわざわざこんな時に他家に来ねえだろ」

「ダリア様!」

 誰かがまた慌ただしくダリアのもとへ駆け寄って来た。邸宅の門を守る番兵の一人だった。

番兵「セドリック様とダリア様宛に書簡を三通お預かりいたしました」

ダリア「ご苦労。一通目は……トリゴの村から……ファレンシス領地の村だな……。もう二通は……」

 封筒に押された封蝋の印を見てダリアは目を見開いた。
 蝶の紋様。それはファレンシス家の家紋であった。
 その家紋をあしらった指輪を印章を持つ者は今ではたった一人。ジュリア以外にはいなかった。

ダリア「この手紙は誰が持ってきたのだ?」

番兵「天馬騎士の女でした。恐らくはトーヴェの天翔ける傭兵団の一人かと思われます」

ダリア「引き留めてあるだろうな?」

番兵「は。しかし、かなり急いでいる様子でしたので何かお声を掛けるのであれば急ぎませんと」

レイス「その女の所には俺が行って礼を伝えておく」

ダリア「ジュリアの事もファレンシス領の事も、君には関係のないことだ。私が行こう」

レイス「卿とお前宛に来た二通の書簡と、トリゴの村から届いた分と合わせて読んだ方が良いんじゃねえか?
ジュリアにとって縁の深い村からとジュリア本人から同時に書簡が届いたんだ。どちら共にも何かあったのかも知れん」

 ダリアは言葉を詰まらせる。

レイス「その女騎士には俺から礼を言っておく。お前はセドリック卿にそいつをさっさと届けろ。
身内の事は心配かも知れんが俺たちは民衆の声を最優先に聞かねばならん立場だ。まあ、俺に言われずとも解っているだろうがな」

 レイスは含み笑いをして言った。ダリアは微かに顔を赤くして早足でゲルブライト家当主のもとへ向かったのだった。

レイス「……さて、どうなることやら、な」

 レイスもまた、早足で天馬騎士――アビゲイルのもとへと向かった。

◇◆◇◆◇◆◇◆
お久しぶりです。何年もお待たせして大変申し訳ありませんでした…。
疲労困憊気味ですが、なんとか投稿できました。赤ちゃんかわいいけど怖い( ;∀;)
走り抜けれるところまで走りますので今後ともよろしくお願いします。

ジュリアはこんな感じのキャラです、という紹介も兼ねた開幕になりました。
色々「おや?」と思う部分があったかもですが、次回も楽しみにしてくれると嬉しいです。
概ね残滓編の流れは決まってるんですが、無い知恵絞って?w?手探りしながら書いていってるので、ちょっとずづ書き足したり書き直したりする事になると思いますが、その辺もよろしくお願いします。

登場人物の設定等は後日また書きます。
皆さん体調に気を付けて2021年も頑張っていきましょう。
今年もよろしくです。
Pass :
mm

Re: 残滓編 第1話

2021/01/27 (Wed) 02:51:45
ざ、残滓編だああああああ!!!!?!?!?!??!?!?!?!??!うわああああああやったああああああああ!!!!!!
待っていました。ずっと、待ってました。
この為に生きてきたまであります。いえ、マジで。


>アビゲイルさん29歳!
天馬のトリニティちゃんまで……頼もしい、頼もしすぎるよぉ…
私の脳内設定では傭兵として連合軍側で大戦に参加し、エイルたちとは別の所で戦ってた人だ!

なんか貫禄が出て気障になったね。お父さん、嬉しいよ。
この女、セイシェル貴族の扱いに慣れてやがるぜ…
そして変わってない…やべえ、涙が出てきた…

かっこいいなあ。さすがマクダレーナの危険性を早々に見抜いた女…
タイミングが良すぎる…タイミングが良すぎる。いったい誰の差し金だお前。
そっと突き返す。

砕けた物言いを要求するの、そういう、そういう。君はマルギットと共に戦った…そう、かつて戦ったのだ…

このタイミングでの天使発言!一瞬ラニアから這い出してきた天使かと思うじゃないですかー!
というかもうすぐガチの天使に会いそうなんですが。


>ジュリアアアアアアアアアアア!
そして、少女は初陣を終えた…。勇敢で、良き心を持っている。強き思いも持っている。実に良い…

なぜか王子様感ありますね、この公女。初々しくてかわいい。

少しづつ、ほんの少しづつでも、いろいろな事を知っていく物語なんやなって…

レアと早く会わせたい!でも仮にこの段階で出会ったとしたら本当に話がこじれるだけだ。
どうですか(?)使徒編以前のレアだと本物の大事故が起きますよ!(自分で自分が分からない、何を言っているんだ…)

>ケヴィン君!
良き民だ…



>エイル
大人になったなア。良くも悪くも。ちょっとティーン要素入ってない?君。
一回立ち直ろうとした心が、折れてしまったんだな…でも、しょうがないよね…

黒鉄の義手!?まさか、それまさかアムナーフォじゃねえよな!?
何やこのくたびれたイケメン!くたびれたイケメン!!!!!
お母さんを悲しませてるんじゃないよ!おまえ!



>レイス、悲しくも美しい友情…
やっぱりレイスは、何かを知っているんでしょうね……


>ダリア
いつの間にかレイスとも気やすい仲になって…
ところであなたたち兄妹のミドルネーム初めて聞いたんですが。


>混沌の残滓!混沌の残滓じゃないか!
汚染されておる、兵士が深く汚染されているよう…
ラニアの賊どもよりもより深く…
兵士の発している言葉、もしや海底都市の言葉だったりするのか…?
なんて恐ろしい…これが人を侵蝕する悪意。混沌を

Pass :
あんみつ

Re: 残滓編 第1話

2021/01/28 (Thu) 01:37:53
お疲れ様です、お母さん!
こちらこそあんまりな管理人ですがよろしくです……

>エイル
駄目な男の色気がある気がします。
一人だけ普通の日々には戻れない……

>ジュリア様
王子様みあって格好いい……!
シュトーレンは好物なのでしょうか。
愛馬に好物の名前つけてるのかなと思いふふふってなりました。

>アビゲイル
た、頼もしい!
いい姐さんになられた。
おいらも雇いたい。
Pass :
名無しお母さん

Re: 残滓編 第1話

2021/02/03 (Wed) 22:36:14
>mmさん
お母さんの肩には、我が子の命と貴方の命も掛かっていたのか…!!
ホンマにお待たせして申し訳ない。
でも喜んでもらえて良かったです。

>アビ姉さん
私の脳内設定でも905年に別の所で戦っていました。
何なら900年のマルギットとの別れの時からずっと陰で戦っていた設定になっています。どんな戦いだったかは…まだ秘密です。
誰の差し金なんですかねえ…(すっとぼけ)
この陽気で飄々とした所は彼女の魅力ですよね。

>ジュリア
立ち居振る舞いは完全に宝塚の男役です。
見た目は女の子らしくて可愛い感じなんですが、ギャップ萌えですね(?)
本当は風花雪月のローレンツ君くらい振り切れた感じにしようかとも思ったんですが、このくらいに抑えておいて良かったです。
あとすっごくどうでも良い話なんですが、私は風花雪月の中でローレンツ君が一番好きです。
色々知った上で彼女がどんな行動を取っていくのか…見守っててください。

>ケヴィン
飾らないまっすぐなキャラです。
今はまだ頼りない印象かもですがきっと彼も成長していくでしょう。

>エイル
5年の間ですっかり変わってしまいました。
議会で主に戦う相手がアスレア様ですからね…ちょっと相手が悪かったというか…実際、相性も悪いでしょうしね。
あ、義手は普通の義手です。
でも銀の手の対になる武器としてアムナーフォにしても良かったかも~^^;

>レイス
エイルの良い所も悪い所も、過去も現在も何もかも受け入れ色々知った上で立ち回っています。
年月を経て主従のような関係にはなりましたが、友情は変わっていないです。

>ダリア
アンパンマンのしらたまさんをモデルにしました。キッズ世代にも親世代にも人気のキャラっぽいですね。
ミドルネームは元々設定はしてあったんですが出さないもの勿体ないので公開しました。
実はレイス(とエスナール家姉妹)には苦手意識を持っています。

>混沌の残滓
ラニアの山賊さん達よりも汚染されていますね。
一般人が汚染され過ぎて、本人の力量を超える力と知識を手に入れた結果ぶっ壊れた、という感じにしました。
言葉は多分海底都市語なのかも知れませんし、最早言葉ですらないのかも知れません。つまりはなんも考えてない!ww

★☆★

>あんみつさん
お久しぶりです。赤ちゃんはすり抜けと鬼神飛燕の一撃3のスキルを持っている事を身をもって知りました。つ、強すぎる……
私もこんな状況ですし、何年掛かるか分かりませんが、ゆるりと進軍しようではありませぬか……_:(´ཀ`」 ∠):_
がんばろ。

>エイル
病んでる男は色気がありますね。但し二次元に限りますが!w
この男はきっと何かをやってくれるに違いない!
温かく見守ってあげてください。

>ジュリア
思った以上に王子様になって書いた本人が結構ビックリしています。
ジュリアは甘党で特にシュトーレンが好物、という設定です。
彼女の名付けのセンスはペットのトイプードルにマカロンって付けるのと同じ感覚ですね。
クリスマスじゃなくても無性に食べたくなる時があるんだよなぁ…シュトーレン。

>アビ姉さん
明るくて爽やかで…いいキャラですよね。
飄々としてるけど嫌な印象を与えないところも好き。
ワシも雇いたい(切実)
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